¿Tiene un bocadillo de camalero? (カマレロ入りのボカディーヨはありますか?)
2012年1月上旬、マドリードに到着。
着くや否やスペイン人から異口同音に「イカリングのボカディーヨ(スペイン風サンドイッチ)は食べたか?」と聞かれた。ここは、イカリングのボカディーヨが有名らしい。
「なんで、海のないマドリードがイカリングなの?」と疑問に思いつつも、頭の片隅に保存。きわめつけは、日本大使館の日本人関係者も同じことを言うのだ。そんなに有名なのか。
ならば、と重い腰を上げて有名店に足を運ぶことにした。
スペインの首都マドリードは、国土のちょうど中心に位置し、海沿いの都市バルセロナ(北東)、バレンシア(南東)、ヒホン(北)からなら陸路5時間程度の輸送で海産物が集まる。そのため、市内にあるメルカド(市場)にはいつも新鮮な魚介類がズラリと並んでいる。その有名店は、観光客で賑わう「サン・ミゲル市場」の近くにあった。イカリングのボカディーヨ専門店だ。
スペインはヨーロッパ南西イベリア半島に位置する。人口約4,719万人(2011年1月)、面積50.6万平方キロメートル(日本の約1.3倍)。
マドリード市中心に位置する夜のサン・ミゲル市場。終日観光客で賑わっている。
スペイン語がまだおぼつかない私にとって、店で注文するのは至難の業。「NHKラジオ講座」で覚えたフレーズを思い出し、勇気を振り絞って注文した。
「¿Tiene un bocadillo de camalero?(カマレロ入りのボカディーヨはありますか?)」
20代の若い店員は一瞬ためらい、ぶっちょう面で「Sí, un momento(はい、少々お待ちを)」。
愛想はないが、客の注文をてきぱきと寡黙にこなす店員は、もろ私の好みだった。
出されたボカディーヨには、パン粉の衣ではなく、小麦粉を軽くまぶして揚げたイカリングのみが挟み込まれていた。野菜がないサンドイッチなんて栄養のバランスが悪いわーなどと心の中でつぶやきながら一口食べる。
衣に特別な味付けがあるわけでなし、シンプルな、だけど塩味がほどよくきいたイカリングだった。それをビールで流し込み、またモグモグ食べる。
実はこれでもミニサイズ。普通サイズだとアゴが外れるくらい大きな口を開けないと食べきれない。
■本当のイカリングのボカディーヨは?
帰宅して今日の出来事をピソの同居人であるスペイン人女性に報告。
「カマレロ入りのボカディーヨを食べたわ」と言うと、彼女の顔つきが変わる。発音が悪いのかなと思い、ゆっくりと繰り返した。それでも理解できないらしい。マドリードの名産であること、何が挟まれていたのかを説明した。
すると、「あー、camalero(カマレロ)じゃなくてcaramales(カラマレス)ね!」
えっ!? あー!そういえば、イカはスペイン語でcaramales(カラマレス)だ。・・・ってことは・・・
「camalero(カマレロ)はスペイン語で‘店員’だった!!!」
つまり私は、若い店員に「bocadillo de caramales=イカリングのボカディーヨ」ではなく、「bocadillo de camalero=‘店員’入りのボカディーヨ」を注文していたのだ。なるほど、これで彼がへんな顔をしたのにも合点がいった。
同居人のスペイン人女性は、スペイン人らしい質問を私にした。
「¿El chico es guapo?(彼は格好よかった?)」
私は即座にこう返した。
「Es muy guapo y está rico(格好良かったし、‘店員入りのボカディーヨ’は美味しかったわよ」
スペイン語がそんなにわからなくてもジョークぐらいは言えるぞっ!そんなふうに考えて、ちょっと恥ずかしい失敗を笑い飛ばすのであった。